というのは、タイムドメイン式のスピーカーを聞いている人には説明は不要でしょう。ライセンス商品ではないといっても、タイムドメインの魂はしっかりこめられていて、とにかく空間が広い。頭の中というより、頭を包んでいる空間全体で鳴っている感じ。その空間は、球形ではなく、頭の両側に膨らんだ、扁平な円盤型らしい。時にはリード楽器、たとえば《ZAPPA IN NEW YORK》の〈拷問は果てしなく〉でのザッパのギターが、前方から聞こえるようなこともあります。しかも、その空間は空気が澄みきっていて、個々のミュージシャンの位置はピンポイントでわかります。どれくらいの音量で演奏しているのか、録音によっては、立っているか、座っているかもわかります。そういう一つひとつ「キャラの立った」音がつながりあい、からまりあって、時々刻々と生み出してゆく音楽、その音楽の全体と細部の両方が同時に聞こえてくる。
イヤフォンというものの性格からでしょうか、細部の再現力がまず目につく、いや耳につきます。クリスティ・ムーアの《AT THE POINT》のライヴでは、近くで歓声をあげている聴衆の一人ひとりが聞きわけられます。クリスティの声のあや、ニュアンス、息継ぎが、手にとるようにわかる。何の苦労もなく。歌詞も明瞭で、リスニング能力が上がったように錯覚するほど。